HINTS課題解決のヒント
広告配信+購買分析で実現する、読売新聞の新たな挑戦
Cookie規制やプライバシー保護の強化というデジタルマーケティングの変化の中で、興味関心データに頼ったターゲティング配信の精度は低下しつつあると言われている。そんな中で、実際の購買データに基づく配信・検証が可能な「リテールメディア」への注目が高まっている。今回、読売新聞社とSMNが展開する広告配信基盤「YxS Ad Platform」に、イオングループの購買データを保有するイオンマーケティングが参画。広告に接触した人が実際に商品を買ったかどうかまで可視化できるソリューションが実現した。
どのような仕組みで「買った」まで見えるようになったのか、イオンマーケティングメディアセールス第1部 チームリーダーの上田 優哉氏と読売新聞東京本社イノベーション本部の阿久津 祥太氏に話を聞いた。

(右)読売新聞東京本社 イノベーション本部 阿久津 祥太氏
リテールメディア業界で期待大の新商品
リテールメディアとは、小売事業者が保有するメディアや会員・購買データをマーケティングに利活用する取り組みを指す。国内外のEC事業者がいち早くこの分野に参入し、広告業界では、“実際にモノが買われている現場”をフィールドにした商品なだけにその存在感を増している。
従来のデジタル広告は、Webサイトの閲覧履歴をもとに「関心が高そうな人」を推測してターゲティングする手法が中心だった。これに対しリテールメディアは、実店舗やECサイトでの購買履歴という「動かぬ事実」をベースにする点で一線を画す。広告主にとっては、消費者の実際の購買行動に近いデータに立脚する手法として期待が寄せられている。
――YxS Ad Platformという枠組みに新たに、国内最大級の小売店舗を持つイオングループの購買データを使った配信ができるようになりました。これによって具体的に何が可能になったのか、どのようなターゲティングが可能になったのか教えてください。
阿久津氏 改めて、おさらいになりますがYxS Ad Platformは2022年にサービスを開始した広告配信プラットフォームです。読売新聞グループが持つ読者データに加え、SMNと連携してテレビの視聴データやその他に出版物や位置情報など、さまざまなデータも活用できる点が特徴です。今回、イオンマーケティング株式会社が展開する「WAON POINT Ads」と協業することにより、購買データに基づいた広告配信が可能となりました。

これまでの運用型広告のターゲティングは、興味関心データや推定情報に基づくものが主流でした。イオングループの購買データは、実際のID-POSデータに紐づいた購買履歴に基づく配信のため、商品を実際に買った人に直接アプローチできる点がこれまでのサービスとの大きな違いです。例えば、Aの商品を買った人に対してBの商品の広告を当てて、ブランドスイッチを狙う施策や、Aの商品を買ったけれど最近購入していない人に対して、もう一度Aの商品を買ってもらうリテンション施策などに活用いただけます。

イオンマーケティングが持つ購買データの強み
――イオングループの流通圏の広がりと、WAON POINTのデータについて教えてください。
上田氏 イオングループはGMS(総合スーパー)、ドラッグストア、コンビニ、専門店など多様な業態を横断する流通圏を形成しています。現状、イオン、まいばすけっと、ウエルシア、マックスバリュ、ミニストップなどの10社がID-POSデータとして連携しています。WAON POINT会員は約1億人 (2026年5月末時点)、そのうち事業会社とのID-POS連携ベースでは約5,000万人規模です。リテールメディアが広がるなかで、日本最大級のプラットフォームであることは間違いありません。また、単発の購買履歴ではなく、ある商品を1年間買っていない、あるいは他ブランドに切り替えた、といった消費者の購買行動の変化を継続的に捉えられる点も、わたしたちの強みだと考えています。

――他社の購買データやリテールメディアと比較して、強調できる違いはありますか。
上田氏 小売業として日本最大級のID-POS情報を持っているからこそ、広告接触者が実際の購買に至ったかどうかまでをトレースすることが可能です。GMSやスーパーマーケット、ドラッグストア、コンビニを横断したデータの抽出が可能であり、その結果分析にも奥行きを出すことができる。そこまでの効果検証を得られるという点はかなりユニークだと思っています。
――データ分析における奥行き
上田氏 データの奥行きを象徴する事例が「ランドセル」です。ランドセルの購入という生活イベントから、お子さまを持つご家庭のライフステージを把握することができます。そのため、親御さまの関心が高まる教育や進学準備などのテーマについて、生活の節目に合わせて適切なタイミングで情報提供やコミュニケーションを行うことが可能になります。

広告効果を「実購買」で検証できるのが強み
――具体的に、どのようなターゲティング手法があるのでしょうか。
上田氏 分かりやすいところでは、自社商品を購入した人に対して、もう一度購入を促してみるというアプローチがあります。もう一つは、競合商品を買っている人に対するアプローチです。例えば、A社やB社のビールを買ったことがある人に対して、C社のビールの広告を当ててブランドスイッチを狙う、といった使い方です。 さらに、商品単位ではなく、もう少し広いカテゴリー単位で括ることもできます。アルコール飲料を買っている人、ノンアルコール飲料を買っている人、チョコレートを買っている人、といった括り方です。

――リテールメディア施策といえば購買検証、というイメージが強いかと思いますが。
阿久津氏 購買検証ができる、という点だけを強調してセールスをしてしまうのは、実は危険なことだと思っています。その商品の認知率の問題なのか、季節性やタイミングの問題なのか、そういったマーケットの動きをある程度理解した上でアプローチしないと、広告そのものの価値を誤解されてしまう可能性があります。
ターゲットに広告を配信出来るだけでなく、配信後の購買データが見られるということ自体に価値があると考えています。購買率が単純にリフトしたかどうかというよりは、どういったユーザー行動が起きているのかが、データで見えることが重要なことだと考えています。

読売新聞社との協業で生まれる新しい価値
――イオンマーケティングとして、読売新聞社に期待している点を教えてください。
上田氏 読売新聞社は我々が生まれるはるか昔からある老舗メディアです。高いブランド力とそれに紐づく社会的な信頼性、情報発信力はもちろんですが、マルチメディアとしての展開力をお持ちだという点に大きな期待を寄せています。その読売新聞社の営業力によって、我々だけでは実現できない価値創出のシナジーが生まれ、お客様にとってもより価値のある提案ができると考えています。
――その話を受けて、読売新聞社側としてはいかがですか。
阿久津氏 営業部門としては、これまでリーチできていなかったメーカー様にアプローチできるようになった、という実感があります。予算の出どころは事業部なのか、宣伝・PR部門なのか、クライアントによって様々です。新聞広告だけに頼っていた時代から、外部のリソースとも協力しながら営業する必要がある時代になった中で、このサービスは我々にとって、たいへん大きな意義があると感じています。
――読売新聞社として、この協業で提供できる価値は何でしょうか。
阿久津氏 大きな価値の一つが、新聞社が運営する広告配信プラットフォームとしての信頼性にあります。ブランドセーフティ、つまりクライアントが望まないサイトに広告が表示されてしまうことや、悪意のあるプログラムによる広告のクリックといった問題を防ぐ取り組みに、我々はサービスの品質に気を遣っています。大手メーカー様を中心に、ブランドセーフティやクリーンな広告環境を重視される企業が増えているので、そこは新聞社としての品質の強みだと考えています。
こうして、イオンマーケティング、読売新聞社・SMNという役割分担のもと、購買データ配信と、購買検証という2つの軸から広告主にアプローチできる点が、この協業ならではの強みとなっていると考えています。

今後のリテールメディア市場
――今後のリテールメディア市場の展望について、お聞かせください。
阿久津氏 リテールメディア市場はまだ発展途上です。我々の実績はこれからですが、これまでは、広告を「見た」「検索した」「購入した」という一連の行動が、それぞれ分断されたデータとして捉えられていました。今後は、認知から検索、理解促進、そして実際の購買まで、一気通貫で見られるものになっていくと考えています。まだ点として存在している情報が、今後は線としてつながっていく。そうした未来が、リテールメディア市場の拡張性だと思っています。