HINTS課題解決のヒント

ポスト

2025.08.29

「世よの中なかにルビを増ふやす」
ルビの日ひ(6月がつ2ふつ日か)に新聞広告しんぶんこうこくを掲載けいさい

“社会しゃかいにふりがな(ルビ)を適切てきせつに増ふやすことで、あらゆる人ひとが学まなびやすく、多文化たぶんかが共生きょうせいする「ルビフル」な社会しゃかいづくりを目指めざす”というユニークなミッションの元もとに2023年ねんに設立せつりつされたルビ財団ざいだんが、6月がつ2ふつ日か(ルビの日ひ)に新聞広告しんぶんこうこくを掲載けいさいした。「ルビは好奇心こうきしんのバリアフリー」というメインコピーに込こめられたルビへの思おもい、出版業界しゅっぱんぎょうかいにとどまらず一般企業いっぱんきぎょうを巻まき込こみ始はじめたルビ財団ざいだんの活動かつどうについて聞きいた。(本ほん記事きじも総そうルビでお伝つたえします)

一般財団法人いっぱんざいだんほうじん ルビ財団ざいだん 代表理事だいひょうりじ 伊藤 豊 氏いとう ゆたか し
2025年ねん6月がつ2ふつ日か「ルビの日ひ」朝刊掲載ちょうかんけいさい

「世よの中なかにルビを増ふやす」啓発活動けいはつかつどうの本格ほんかくスタートは新聞広告しんぶんこうこくで

――6月がつ2ふつ日かに掲載けいさいされた新聞広告しんぶんこうこくの「ルビは、好奇心こうきしんの、バリアフリーです。」というメッセージは読者どくしゃを立たち止どまらせるのに十分じゅうぶんなインパクトと新鮮しんせんさでした。広告掲載こうこくけいさいの背景はいけいをお聞きかせください。

「世よの中なかにルビを増ふやす」というシンプルな目的もくてきで設立せつりつしたのが「ルビ財団ざいだん」です。設立せつりつは2023年ねん5月がつで、2年近ねんちかくにわたり、さまざまな試こころみをしてきましたが、6月がつ2ふつ日かを「ルビの日ひ」として制定せいていし、世よの中なかにルビを広ひろめる本格的ほんかくてきな啓発活動けいはつかつどうをスタートするに当あたり、社会しゃかいに対たいして強つよいメッセージを出だす必要ひつようがある。それには新聞広告しんぶんこうこくが最もっともふさわしいと思おもいました。

――なぜ今いま「ルビ」なんでしょうか。「ルビ財団ざいだん」設立せつりつの経緯けいいを改あらためて教おしえてください。

ルビ財団ざいだんのファウンダー(設立者せつりつしゃ)はマネックスグループ代表だいひょうの松本大まつもとおおきです。松本まつもとさんのご両親りょうしんが出版社勤務しゅっぱんしゃきんむで、幼おさない頃ころ、手ての届とどくところにさまざまなジャンルのルビ付つきの本ほんが置おかれていました。それで世界せかいが広ひろがったという原体験げんたいけんがあり、いつか総そうルビの本ほんの図書館としょかんを作つくりたいという夢ゆめを持もっていました。一方いっぽう、私わたしはスローガンという会社かいしゃを創業そうぎょう(現在げんざい、東証とうしょうグロース上場じょうじょう)してから17年間ねんかん社長しゃちょうを勤つとめたところで引退いんたいし、今度こんどはなにか非営利的ひえいりてきな活動かつどうをやりたいなと思おもっているところでした。松本まつもとさんにお会あいしたときにそのことを話はなしたら、「ルビをやろう」と誘さそわれたのです。一瞬いっしゅん面食めんくらったのですが、私わたしにも小学校低学年しょうがっこうていがくねんの娘むすめがいて、漢字かんじが難むずかしくて本ほんを読よむのを諦あきらめているシーンを目まの当あたりにしていましたし、誰だれもやったことがないことをやりたいという私自身わたしじしんの考かんがえにも合致がっちし、意気投合いきとうごうしたというのが出発点しゅっぱつてんです。ですから、社会課題解決しゃかいかだいかいけつのためにルビ財団ざいだんを作つくったというより、ルビを増ふやすという目的もくてきありきで仲間なかまが集あつまって活動かつどうを始はじめた、というちょっと変かわった成なり立たちの財団ざいだんです。メンバーも私わたしを含ふくめ全員兼業ぜんいんけんぎょうなんです。

活動かつどうが広ひろがるきっかけになった「ルビフル本ほんフェア」

――これまでどのような活動かつどうをしてきたのでしょうか。

最初さいしょにアプローチしたのは出版社しゅっぱんしゃです。しかし、出版社勤務しゅっぱんしゃきんむの知人ちじんからは「一般いっぱんの本ほんにルビを振ふらないのはマーケットニーズがないから。児童書じどうしょなどルビが必要ひつような本ほんにはすでに振ふっている」とつれない返事へんじが。加くわえて、漢字かんじが読よめる人ひとにとってルビは邪魔じゃまという意識いしきもあって、本ほんにルビを振ふることによって、今いま本ほんを買かってくれている読者どくしゃが離はなれていくという懸念けねんもあるというのです。

出版社しゅっぱんしゃへのストレートなアプローチはなかなか難むずかしそうだということが分わかったので、次つぎに着手ちゃくしゅしたのが「ルビフルボタン」の開発かいはつと無償提供むしょうていきょうでした。ルビフルボタンは、WebサイトのHTMLソース上じょうにコードを一行追加いちぎょうついかするだけで、ルビのオン・オフボタンが実装じっそうできるというものです。

画面隅がめんすみの「ルビOFF・ルビON」ボタンを押おすことでルビ表示ひょうじのオンオフができる。ルビフル財団ざいだんのHPから

しかし、今いまでこそ少すこしずつ利用りようサイトが増ふえているものの、当初とうしょはWebサイトとシステムを管理かんりする人ひとが別べつということもあって、なかなか普及ふきゅうしませんでした。

次つぎに試こころみたのが書店しょてんへのアプローチです。書店しょてんでルビが振ふってある本ほんが売うれれば出版社しゅっぱんしゃもルビ付つきの本ほんを出版しゅっぱんしてくれるようになるのではないかという発想はっそうです。ルビ本ほんのフェアを書店しょてんに提案ていあんしようということになってからというもの、私わたしは丸善まるぜん・丸まるの内本店うちほんてんに足あししげく通かよい、最初さいしょは科学かがくジャンルの棚たなの本ほんを一冊いっさつずつ開ひらいていってはメモを取とり、78冊さつのルビのある本ほんのリストを作つくりました。大人おとなも子こどもも楽たのしめる「ルビフル本ほん」の選書せんしょです。それを書店しょてんの店長てんちょうのところに持もって行いって、ルビのある本選書ほんせんしょフェアをやっていただけないかという提案ていあんをしました。そうやってやっと実現じつげんにこぎつけたのが2024年ねん9月がつに丸善まるぜん・丸まるの内本店うちほんてんで実施じっしした「ルビフル本ほんフェア」でした。

ルビのある本選書フェア様子
ルビのある本選書フェア様子
ルビのある本選書フェア様子

このフェアが大変たいへんに好評こうひょうで、2025年ねん5月がつには丸善まるぜんジュンク堂どう書店しょてん90店舗てんぽに拡大かくだいしてフェアを開催かいさいしました。ルビ財団ざいだんが世よの中なかに認みとめられたと感かんじた最初さいしょの活動かつどうでした。

「ルビフル本ほん」から社会課題解決手段しゃかいかだいかいけつしゅだんとしての「ルビ」へ

――2025年ねんは「ルビフル大賞たいしょう2025」「ルビフルシンピジウム」も開催かいさいしていますね。

「ルビフル本ほんフェア」をきっかけにさまざまなアイデアが出でてきました。ルビがあるからこそ届とどいた一冊いっさつを称たたえる「ルビフル大賞たいしょう2025」、ルビに関係かんけいするさなざまな社会課題しゃかいかだいを考かんがえる「ルビフルシンピジウム」もそうしいった活動かつどうの一ひとつです。

新聞広告掲載しんぶんこうこくけいさいと同おなじ「ルビの日ひ」の6月がつ2ふつ日かに発表はっぴょうしたのが「ルビフル大賞たいしょう2025」です。第だい1回かいのグランプリには「サッカードリブル解剖図鑑かいぼうずかん」(三笘薫みとまかおる/エクスナレッジ)と「Newton 別冊べっさつ 精神科医せいしんかいが語かたる発達障害はったつしょうがいのすべて」(ニュートンプレス)が選えらばれました。通常つうじょうはルビが振ふられないスポーツ書しょや科学専門書かがくせんもんしょにルビが振ふられることによって、専門用語せんもんようごの不慣ふなれな大人おとなから子こどもまで隔へだてなく読よめるようになり、するとおのずと興味きょうみが持もてるようになるようです。

――「ルビフルシンピジウム」を開催かいさいしようと思おもったきっかけは何なんだったのでしょうか。

ルビ財団ざいだんのWebサイトには一般いっぱんの方かたから応援おうえんメッセージや意見いけんが多数たすう寄よせられます。ギフテッドのお子こさんをお持もちの親御おやごさんから感謝かんしゃのメッセージが届とどいたり、ディスレクシアという漢字かんじの読よみ書かきに障害しょうがいがある方かたからの連絡れんらくがあったりと、これまでルビの裾野すそのが広ひろいことを実感じっかんさせられてきました。そこで、一般いっぱんの人ひとたちが参加さんかできるようなシンピジウムを開催かいさいすることで、ルビに関かかわる新あたらしい気きづきやコミュニティーの形成けいせいにつながるのではないかと考かんがえたのです。第だい1回かいの「ルビフルシンピジウム」は、7月がつ13日にちに上智大学じょうちだいがく四谷よつやキャンパスを会場かいじょうに、「どうなる? これからの多文化たぶんか共生きょうせい」をテーマに掲あげて開催かいさいしました。

第1回の「ルビフルシンピジウム」

外国人がいこくじん労働者ろうどうしゃが増ふえる中なかで、外国がいこくがルーツの子こどもたちの教育きょういくや留学生りゅうがくせいの就業しゅうぎょうにまつわる課題かだい、そこに果はたすルビの役割やくわりが話はなし合あわれました。

いま気付きづかれつつあるルビの価値かち

――今後こんごの活動かつどうや計画けいかくについて聞きかせてください。

一ひとつは、「ルビフル大賞たいしょう」を通とおして出版社しゅっぱんしゃや書店しょてんの皆みなさんと一緒いっしょにルビのある本ほんを増ふやしていく活動かつどうを今後こんごも推進すいしんしていきたいと思おもっています。「本屋ほんや大賞たいしょう」のように、出版社しゅっぱんしゃの皆みなさんが「ルビフル大賞たいしょう」を目指めざして本ほんを作つくったと言いわれるくらいの賞しょうに育そだてていきたいと思おもっています。

二ふたつ目めは「ルビフル本ほんフェア」の拡大かくだいです。今いまはまだ丸善まるぜんジュンク堂どう書店しょてんだけなので、今後こんごは全国ぜんこくの書店しょてんに広ひろげていきたいと思おもっています。

三みっつ目めは「ルビフルボタン」のバージョンアップと利用りよう拡大かくだいです。2025年ねん3月がつにキッズサイトの独自どくじ調査ちょうさを実施じっししたのですが、ルビのあるサイトは30%程度ていどしかありませんでした。一般企業いっぱんきぎょうだけでなく、県けんなどの自治体じちたいのキッズサイトもついてないところが多おおいのです。

それから最近さいきんは、社内しゃないで使つかっているマニュアルにルビを振ふりたいという相談そうだんがコンビニや飲食業いんしょくぎょうなどから多数たすう来きています。店員てんいんに外国がいこくの方かたが増ふえていることが大おおきな要因よういんです。

また、ルビに関かんするエビデンスやデータもよく求もとめられるようになりました。海外製かいがいせいのアプリにルビ機能きのうを持もたせたいので、本国ほんごくを説得せっとくするためのデータはないか。国内こくないの出版社しゅっぱんしゃからも、ルビ付つきの本ほんを出版しゅっぱんしたいので、社内しゃないを説得せっとくする材料ざいりょうはないかなどの問とい合あわせがあります。そうしたルビに関かんするデータの整備せいびも今後こんご行おこなっていく予定よていです。

――新聞社しんぶんしゃも「読売よみうりKODOMO新聞しんぶん」など子こども向むけ新聞しんぶんにはルビを振ふっていますが、今後こんご、新聞社しんぶんしゃに期待きたいすることはありますか。

明治めいじ・大正期たいしょうきの新聞しんぶんにはルビが付ついていましたね。実じつは、ルビ財団ざいだん最初さいしょの新聞広告しんぶんこうこくを読売新聞よみうりしんぶんに掲載けいさいしたのには理由りゆうがあります。何紙なんしか広告掲載こうこくけいさいの候補こうほに挙あがっていたのですが、調しらべると読売新聞よみうりしんぶんは1874年ねんの創刊そうかん当時とうじ、漢字かんじによみがなを振ふった画期的かっきてきな庶民しょみんのための新聞しんぶんとして発行はっこうされ、「ふりがな新聞しんぶん」という新聞名しんぶんめいも候補こうほになっていた。ルビ財団ざいだんのメッセージを伝つたえ、活動かつどうを知しってもらう新聞しんぶんとしてふさわしいと思おもった理由りゆうです。

米英べいえいへの宣戦布告せんせんふこくを掲載けいさいした1944年ねん3月がつ8日にちの新聞しんぶん「戦時版せんじばんよみうり」。ルビがすべての漢字かんじに振ふられている

今回こんかい新聞広告しんぶんこうこくを掲載けいさいしたのは、活動かつどうを本格的ほんかくてきに開始かいしするにあたり、「世よの中なかにルビを増ふやす」という私わたしたちの活動かつどうの意義いぎを世よの中なかに広ひろく知しってもらうことが必要ひつようだと考かんがえたからです。今いままで社会しゃかいにはない価値かちに気きづいてもらうという意味いみでは、意見広告いけんこうこくみたいなものと言いってもいいかもしれません。広告掲載後こうこくけいさいご、多おおくの人ひとから反響はんきょうがあり、そういう社会的しゃかいてきメッセージを伝つたえる媒体ばいたいは新聞しんぶんを措おいてないと思おもいます。