SPONSORED BY

世界は違っておもしろい

  • ノルウェー編
  • パキスタン編
  • キューバ編
  • アルゼンチン編
  • マレーシア編
  • スイス編
  • モロッコ編
  • 日本編
  • エクアドル編
  • アイルランド編
  • パラオ編
  • フィリピン編

知ってた?これがホントのモロッコ人
王国大使がお教えします!

 アフリカ北西端に位置するモロッコ。ヨーロッパからもジブラルタル海峡をはさんで14キロしか離れていない立憲君主国です。米国作家のバロウズが移住して創作を行い、ファッションデザイナーのサンローランが別荘を構えるなど、アフリカ、ヨーロッパ、そしてアラブの文化が交じり合い、世界各地の文化人を引き付けてきました。近隣国に比べて治安が安定し、ヨーロッパと一味違うエキゾチックな体験ができると、近年、日本でも若い人を中心に魅力的なデスティネーションとして注目されています。そこで実際に生活している人たちの暮らしぶりとは?ラシャッド・ブフラル大使に聞きました。

1

実は〇〇企業が多いんです

 アフリカで日系企業の拠点数の最も多い国は南アフリカ。次に多いのがモロッコです。1人当たりの名目GDPは、1980年には約1000ドルだったのが2018年は3300ドルを超えています。
 20年前にムハンマド6世が国王に就き、様々な経済開発に取り組んできたことが実を結び始めています。優遇税制が適用されるフリーゾーンを設けて外国からの投資を推進し、地中海でも有数の規模のタンジェMED港や高速鉄道などを設けるなどインフラ整備にも力を入れており、アフリカビジネスのハブになりつつあります。
 マラケシュの旧市街やヴォルビリスの古代遺跡など、都市や遺跡九つが世界遺産に登録され、観光産業も大きな柱になっています。日本からの観光客は年間約3.2万人で、若い方を中心に個人旅行で訪れる人が目立つようになっています。

2

ゲストにお茶を出すときは・・・

 モロッコでお茶と言えば、「アッツァイ」と呼んでいるミントティーのこと。グリーンティーにミントを入れて、私自身、1日に3~4回は飲みますね。日本ならペットボトルで冷やして売っていそうなものですが、モロッコでは基本的にポットでいれ、温かいお茶を飲みます。
 グリーンティーは18世紀に日本の貿易商がモロッコに持ち込んで広がったという説もあります。日本との縁はまだあって、モロッコにも日本の茶道のように客をもてなすセレモニーがあります。ポットに大量の砂糖と茶葉、そしてミントを入れて炭火のコンロに載せて煮出します。この一連の作業を客の前で恭しく行い、お茶を注ぐときはポットを高く掲げて上から滝のように注ぎます。
 場合によって、部屋に香をたき、客はローズウォーターで手を清めて気分をリフレッシュさせてからミントティーを飲みます。相手をもてなそうとする気持ちは一緒で、両国に共通している貴重な文化ではないでしょうか。

3

食べてよし!塗ってよし!

 25年前ほどから日本でもファンが広がっているアルガンオイル。モロッコに自生する広葉常緑樹のアルガンの木が付ける硬い種子を割り、核をペースト状にしたものからしぼったオイルです。香ばしい香りがして調理に使われるのに加え、肌の保湿性に優れるとされてスキンケア用の美容品としても愛用されています。
 アルガンの木は地中30メートル以上深く根を伸ばし、1年以上雨が降らなくても枯れないと言われています。ヤギが木に登って葉や実を食べるので、その写真が旅行ガイドなどに掲載されて有名になりました。
 種の核をすりつぶしたペーストからわずかしか油分を抽出できないので貴重で、高価なオイルです。オリーブオイルの数倍のビタミンEやオレイン酸などを豊富に含み、肌に塗るとしっとりとなじみ、その価値を実感できますよ。
 強い生命力を持っている樹木なので、砂漠の緑化に役立てようというプロジェクトも進んでいます。

4

タジン鍋、「タジン」の意味は?

 タジン鍋は、日本の雑貨店などでも普通に見かけるようになりましたね。円すい形の蓋がついた土鍋で、モロッコでは料理に日常的に使います。
 モロッコ人は、日本人が「タジン鍋」と言っているのを聞くと、少し変な気持ちになります。「タジン」とは「鍋」の意味。「タジン鍋」は「鍋鍋」という意味になるからです。タジンは料理そのもののことも意味します。
 料理は野菜や肉を入れてハーブやスパイスと合わせて煮込んだもので、うま味を逃さず、ヘルシーなので日本でも広がっています。世界最小のパスタと言われるクスクスのファンも増えています。クスクスは蒸して、野菜や肉を煮込んだスープをかけて食べます。
 ほかにもキュウリやトマト、タマネギなどをさいの目に切ってあえたモロッカンサラダも有名です。モロッコ料理は地中海の「オリーブオイルを使った健康的な料理」のひとつとしてスペイン、イタリア、ギリシャと共同で国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)無形文化遺産に登録されています。

5

石造りのハマムでリラックス

 ハマムとはスチームバスのこと。以前は家庭に備わっていなかったので、日本の銭湯のようにパブリックなハマムに行きました。現在はハマムを自宅に備える家庭も増えました。サウナのように木製でなく、石造りなのが特徴で、大きな水槽に入った水を沸かして部屋に湯気を充満させます。
 パブリックなハマムは庶民的なものから、エステなどのサービスを行う高級なものまで実に多種多様です。日本人が温泉につかってリラックスする感覚に近いと思います。
 体が温まり、毛穴が開いてくると、黒オリーブから作ったジェル状の石けん「サボンノワール」を体中に塗って、「ケッサ」というあかすりミトンで体を磨き上げます。それからアルガンオイルやローズウォーターなどでマッサージを受けると、日ごろの疲れが一気に癒されます。モロッコの女性たちにとっては社交の場でもあるようです。
 日本でもモロッコ式エステとしてハマムを取り入れた施設を見かけるようになりました。

ラシャッド・ブフラルさん
(駐日モロッコ王国特命全権大使)

 1951年、モロッコ・ラバト市生まれ。70年、同市でバカロレア取得。72年パリのジャンソン・ドゥ・サイリー高等学校付属経営学準備クラス修了。76年にフランス・ルーアンの商業・経営大学院で経営学修士号(MBA)を取得し、貿易産業省に入省。首相の経済財務顧問、駐EU大使、外務次官、駐独大使、駐米大使などを経て2016年12月から現職。

このページはスマートフォンの
画面を立ててご覧ください。