HINTS課題解決のヒント
「どうせ遊びでしょ」のイメージを一新し、吹奏楽部に並ぶ部活動へ
全国の軽音楽部を応援する「届け!魂の歌」プロジェクト
全国で10万人を超える生徒が所属するといわれる、高校の軽音楽部。しかし、その活動実態や魅力はまだ十分に知られているとはいえず、ときには「遊びでやっている」「アウトローの集まり」など、誤解に基づいて語られることもある。 そうしたイメージを一新し、その活動を支援するために立ち上がったのが『「届け!魂の歌」高校軽音楽部応援プロジェクト』だ。長年、軽音楽部の支援を続けてきた全国楽器協会(全楽協)が、新たに読売新聞社の協力を得て推し進める本プロジェクト。その背景や取り組み、そして今後について、全楽協の二人に話を聞いた。

音楽の普及活動に取り組む傍ら、自身でも楽器演奏を楽しむ
全国で部員数が10万人を超える軽音楽部
その活動の様子と魅力を多くの人に届けたい
──はじめに、本プロジェクトの概要について、教えてください。
尾崎氏 『「届け!魂の歌」高校軽音楽部応援プロジェクト』は、全国の高校の軽音楽部を盛り上げるために、全楽協と読売新聞社が3か年計画で取り組むプロジェクトです。
具体的には、軽音楽の活動が活発な学校に密着し、全国大会に出場するまでの軌跡をテレビ番組で放送したり、ウェブサイトでいろいろな楽器のワンポイントレッスン動画を紹介したりしています。読売新聞のメディアとしての力を借りて、軽音楽部の活動と魅力をより多くの人に届けることを目指しています。

──プロジェクトを通じた目標はありますか。
尾崎氏 私たちが願っているのは、文化系部活動の大きな発表の場である「全国高等学校総合文化祭」(総文祭)に軽音楽が正式な部門である「規定部門」として加わることです。現在、音楽分野では「吹奏楽」「器楽・管弦楽」「日本音楽」などが規定部門となっていて、各都道府県での総文祭で毎年必ず部門開催されています。これにより広く社会一般に文化部活動として認知され、高校生たちの大きな目標になっています。残念ながら軽音楽はまだそのステージに至っておらず、開催されない年もある状況です。このプロジェクト活動によって、軽音楽が正式な部門として認められる機運が高まればと思っています。

──総文祭の規定部門になるために、感じている課題はありますか。
森山氏 一つは、社会的な認知不足です。軽音楽部の活動自体は、アニメ番組などの影響もあり、この10年ほどで非常に盛んになっています。全国の部員数は10万人を超えるともいわれており、全楽協が2025年に行った調査ではそのうちの55%を女子が占めています。みんな一生懸命に練習に取り組み、真面目に音楽に向き合っています。
一方で、そうした今の状況がなかなか外部に伝わっていないというのが実情です。全楽協は10年ほど前から軽音楽を楽器面から支援する取り組みを続けてきたのですが、「校内の悪い男子生徒が集まっている」といった誤ったイメージを持たれることも多く、時には「どうせお遊びでしょ」と言われることもありました。
──活動が十分に伝わっていないんですね。
森山氏 そうなんです。そしてもう一つ、部活動の生徒や先生に、音楽、特に楽器に対する知識がまだまだ足りていないという課題もあります。部員数が増えたことは喜ばしいですが、楽器の取り扱いや指導方法などがわからず活動している学校も少なくありません。顧問の先生も生徒も知識がないために、アンプやドラムの使い方を間違えたまま演奏していた学校もありました。
こうした状況を改善し、アニメなどによるブームが終わっても軽音楽が根付くようにするためには、楽器のことを知り、本当の演奏の楽しさを感じてもらうことが大切です。 こうした背景から、今回のプロジェクトでは、軽音楽に対する社会的な認知を向上させるとともに、活動している先生や生徒に楽器の知識を伝えられたらと考えています。
テレビ番組や新聞記事に大きな反響
「胸を張って活動できる」と生徒や先生の励みに
──これまでプロジェクトで行った具体的な活動内容について、教えてください。
森山氏 お伝えしたように、ウェブサイトや動画の制作などさまざまな取り組みをしていますが、特に反響が大きかったのは、BS日テレで放送されたテレビ番組です。
番組では、26年3月に名古屋市で開催された「全国高等学校軽音楽発表会~軽音楽SUMMIT~」という全国大会を取り上げているのですが、大会の様子だけではなく、奈良育英中学校・高等学校と埼玉県立所沢高等学校という強豪校に密着し、それぞれの学校が大会に出場するまでの軌跡を紹介していました。 大会本番の演奏を見る機会はあっても、日々の活動や練習風景が表に出ることはほとんどありません。指導方法に悩む顧問の先生も多い中で、実績のある学校が日々どのような練習をしているのか、先生がどう生徒と向き合っているのかを紹介してもらうことに、大きな意味があったと思います。

テレビ番組の内容は、プロジェクトの公式ページやYouTubeでも閲覧可能
──実際にプロジェクトを実施して、どのような反響がありましたか。
尾崎氏 私は特に、楽器業界内で番組を見た方からの「今の軽音楽部はこんなに頑張っているのか」という驚きの声をたくさん聞きました。女子生徒が中心となって活動していたり、生徒たちが真剣に音楽に向き合っていたりする姿が映像を通して伝わったことで、認識が大きく変わったようです。
音楽に携わる人たちにも、軽音楽部の今の姿が十分に届いていないのだと改めて実感しました。
森山氏 顧問の先生からも、さまざまな反響がありました。番組を見て指導方法などを知ることができただけではなく、読売新聞の記事やウェブサイトに載ったことで、「学校の内外に軽音楽部は頑張っているぞと胸を張れる」「吹奏楽部に並ぶ部活動として認められたようですごくうれしい」という声がありました。
さまざまな場所で取り上げられたことが、生徒や先生の励みになったと感じています。

学校関係者だけでなく、保護者や地域にも伝わる
読売新聞ならではの発信力とコンテンツのクオリティ
─プロジェクトは、読売新聞社と進めています。
尾崎氏 やはり大きいのは、幅広い層へ届けられたことです。私たち自身の発信では、どうしても届けられる層に限界があります。読売新聞社と一緒に取り組んだことで、音楽業界や学校関係者だけではなく、保護者や地域の方々、さらには軽音楽にこれまで関わりのなかった上の世代の方たちまで、幅広く情報を届けることができたと感じています。
また、読売新聞という信頼されているメディアの力も大きいと思います。軽音楽部の活動が社会に認められることを目指す上で、「読売新聞に取り上げられた」という実績は大きな後押しになりますし、森山さんが言ったように、頑張っている生徒や先生が活動を続ける大きな力になったと思います。
森山氏 私が驚いたのは、新聞にとどまらず、テレビ番組、ウェブサイト、動画コンテンツと、さまざまな場所での発信につながったことです。最初は紙面での取り組みだけだと思っていたのですが、メディア企業としての幅広さを実感しました。
さらに、一つひとつのコンテンツの完成度の高さについても、率直に「すごい」と感じました。撮影一つとっても本格的で、クオリティを高めることに徹底している。私も仕事で動画制作に携わったことがありますが、その経験と比較しても「ここまでやるんだ」と感じる場面がたくさんありました。
番組を見ても、長くいろいろな学校とお付き合いしてきた私自身も発見がありました。プロとしての深い取材があってこその内容だと感じています。

軽音楽SUMMITの情報は、読売新聞だけでなく読売中高生新聞にも掲載。部活動に打ち込む生徒に焦点を当てる「部活の惑星」では、2週にわたって出場校の活動を紹介した
──最後に、今後の展望について教えてください。
森山氏 私は、軽音楽に取り組む皆さんに役立つ情報をたくさん届けて、生徒や先生が「活動を続けて良かった」と感じられる軽音楽部にしたいと思っています。
そのためには、楽器のことをよく知り、演奏の楽しさ、音楽の素晴らしさを感じてほしい。そして、みんなが聞いて「いいな」と思える音楽ができて、軽音楽部に入りたいと思う生徒が増え、すそ野が広がっていくとうれしいですね。
尾崎氏 あわせて、軽音楽部のことを知らない人に、もっと軽音楽部の魅力を伝えていきたいと思います。
現在、軽音楽部が総文祭の規定部門になるまで「あと一歩」というところまで来ています。それぞれの学校では、本当に頑張って軽音楽に取り組んでいる生徒や先生がたくさんいます。多くの人にその姿が届けば、それが応援の輪につながっていく。そしてひいては、軽音楽が学校を超えて地域に根付き、文化になっていくはずです。
これからも幅広い層へ情報を発信し、軽音楽の未来に向けて活動を続けていきたいと考えています。