広告企画・制作 YOMIURI BRAND STUDIO

TOKYO GREEN BIZ

Vol.2

2024/2/7

都心ならではの緑の価値広める
東京グリーンビズ

東京都は、100年先を見据えた新たな緑のプロジェクト「東京グリーンビズ」を推進し、東京の緑を「まもる」「育てる」「活かす」取り組みを強化し、自然と調和した持続可能な都市への進化を目指している。
当プロジェクトでは、さまざまなステークホルダーとの対話を重視し、コミュニケーションの機会を多様な形式で設けている。本企画では、その対話の内容や外部有識者からの声などを3回にわたって特集する。
第2回では、東京グリーンビズアドバイザリーボードのメンバーで國學院大學観光まちづくり学部教授の下村彰男氏から、東京都の緑の特徴や、これからの都市公園に求める役割などについてお話いただく。

Vol.1 若者と対話重ね、自然と調和した都市像探る 東京グリーンビズ

Vol.3 一人ひとりの参画が、未来を駆動する── 緑と生きる都市、東京へ

斜面地、水辺 表情豊かな都心の自然

東京都は、「東京グリーンビズ」を推進するにあたりアドバイザリーボードを設置し、有識者からの意見を聴取している。メンバーの一人、國學院大學教授の下村彰男氏は、風景計画、観光・レクリエーション計画の専門家だ。
下村氏は、東京都心の緑の特徴として斜面地を挙げる。
「都心には、斜面地がたくさんあります。高低差は20メートルほど、6階建てのビルぐらいです。土地利用が難しい場所で、緑が昔のまま残っているところもあります。斜面の上は見晴らしがよく、また斜面の下には川や水辺があり、かつては名所と呼ばれ行楽地として人々が憩う場所も数多く立地していました。江戸時代後期の書物によると、花見や紅葉狩り、虫の声を楽しむ“虫聞き”など、年間30以上もの行事で江戸の人々は自然に親しんでいたようです。それほど、都心の緑は表情豊かなのです」
起伏に富んだ地形により、北から南へと高低差のある場所が連なる都心の街。建物の影になり斜面地の緑は見えづらくなったが、木々が小さな林を形成しているところは多い。上野恩賜公園(台東区)、飛鳥山(北区)、御殿山(品川区)などは、江戸時代も今も多くの花見客が訪れる都心の高台だ。根津神社(文京区)の斜面は、4月になるとツツジの花で埋め尽くされる。
また山から海へと目を転じれば、かつては海苔の養殖が盛んに行われ、現在でも潮干狩りができる江戸・東京の海が広がっている。東京都は実に多様な自然が残る都市であると、下村氏は強調する。

地域コミュニティ再編 公園が担う

都心に残る多様な自然、それは長い年月人々が手をかけ守ってきたものだという。
「斜面地や里地里山、公園や学校の緑もすべて、人手を継続的に入れないと守れない自然です。これを、二次的自然環境といいます。これらの緑を増やす、あるいは現状維持するためには、今後も人の介入が不可欠です」
二次的自然環境に対して、人手がなくても自然が守られるエリアを原生自然という。しかし、国土の7割を二次的自然環境が占める我が国では、緑を守るには私たちの営為や関心が必要だ。

里山保全地域。東京都では、里山の適切な管理など
人の手を入れて自然を守る取り組みを行っている

下村氏によると、緑は癒しを与えるだけのものではない。その場所と自分とのつながりを象徴し、「空間、時間、社会に自分をオリエンテーション(順応・定位)する」手がかりになるものだという。
「昨今は土地やコミュニティとのつながりが希薄になっていて、自分の居場所を見つけづらくなっていると感じます。都心に暮らす人の中には、親や祖父母がこの同じ場所でずっと暮らしてきて、その延長に自分がいると認識できない人が多い。孤独感を強め、犯罪、暴力などの社会病理を助長する原因のひとつはこれではないかと思っています」
地域コミュニティを再編し、オリエンテーションの機会をつくる場として今、公園にその役割が求められているのではないか。
公園の役割は、時代とともに変化してきた。1956年に都市公園法など都市部の公園緑地を増やす制度が整えられ、70年代からの30年間で公園緑地の一人当たりの面積は約3倍にまで増加した。
「公園を量的に増やしたあとの今、多面的な活用を図ることが公園に求められています。例えば、自宅でも職場や学校でもない、第3の居場所“サードプレイス”としての役割もその一つです。誰もが気軽に集える新しい居場所であることが、地域コミュニティの再編をも可能にすると期待しています」

COLUMN都市公園の数 一番多いのは

都市公園法などの制度が整備されて以降、東京都でも積極的に公園の数を増やしてきた。現在都立公園は84か所、都立海上公園は40か所あるが、都内にはこのほか、区市町村立の公園や児童遊園など、合計すると約1万2000か所の公園が存在している。都会のイメージが強い東京都だが、47都道府県中面積当たりの都市公園の数が最も多い。

都立公園面積の推移 2023年10月現在 2,064ha 2030年度目標 2,168ha

公園が、人と人、人と土地をつなぐ

都心に暮らし働く人の中には、最近の公園の変化に気付いている人もいるだろう。
以前は規制されていた公園内へのカフェやレストランの設置が近年では可能になっており、2017年の都市公園法の改正でより加速される。ほかにも、敷地を囲っていた柵を撤廃して開放性を高める、複合遊具やユニバーサルデザインに配慮した遊具を設置することで年齢や障がいの有無にかかわらず子どもたちが一緒に遊べるようにするなど、公園がより多くの人にとって利用しやすい場所に変わってきている。

船型遊具「みらい号」(都立砧公園)

「昔は、各地域の神社が地域コミュニティの拠点としての機能を果たしていました。都心でその役割を引き継ぐのが公園だと考えています。いろいろな年代の人が思い思いに過ごせて、“あそこへ行けばきっとあの人に会える”そう思える場所になることで、コミュニティへの帰属意識が高まるはずです」
さらに、下村氏はその土地の歴史や自然の特徴を伝えることも、公園が果たすべき役割だと強調する。
「公園は、ずっと残っていく。その土地や地域の記憶を何世代にもわたって伝えていける場所なんです。地域への理解を深めることができれば、愛着や誇りはおのずと生まれます。人と人、人と土地とのつながりは私たちに生きる力を与え、そして自分たちで緑を守らなければという意識を育みます」
都心の緑は、時を超えて人々に寄り添ってきた。特に、コミュニティが希薄化した現代を生きる私たちにもたらす、緑の存在意義は大きい。そして100年先を生きる子孫に、この価値ある緑を残していかなければならない。
「街によって公園の役割は違いますから、東京都にはそれぞれの公園の役割にあわせて、どのような設備や整備が必要かなどの指針づくりを担ってもらいたい。地域と東京都の対話の循環が、緑の管理に対する認識の向上や積極的な参加を生み、結果的に緑の保全と利活用の良い循環につながるはずです」
東京都では、都民と協働して公園の緑をつくるなど、今も地域に根差す緑の取り組みを進めている。

浮間公園UkiUkiガーデンワークショップ
木場公園での植樹イベント

東京グリーンビズでは、こうした取り組みをさらに広げ、さまざまな年代や職業の方々からの意見を取り入れながら、自然と調和した持続可能な都市づくりを目指していく。

東京グリーンビズ