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ニッポンの街づくり世界に発進。公共交通指向型開発&スマートシティ 海外展開の最前リポート ニッポンの街づくり世界に発進。公共交通指向型開発&スマートシティ 海外展開の最前リポート

 日本で実践されてきた効率的な街づくりが世界の注目を集めている。TOD(Transit Oriented Development)と呼ばれる公共交通機関の利用を前提に組み立てられた都市開発もその一つ。日本を代表する組織設計事務所の日建設計(本社・東京)は、こうした「日本型」都市に加え、資源のない日本で発展した高効率の省エネ技術とICTなど先端技術を活用して、持続可能な街づくりを目指すスマートシティを海外展開することで、相手国の発展や環境改善に取り組んでいる。現在、同社が手がける海外プロジェクトを通して都市開発の最前線を見てみよう。

「駅とまち」を一体化 
ヒトと環境に優しい“お家芸”

渋谷駅周辺 <過去〜未来>

過去(1957年)
現在(2019年)
未来(渋谷駅周辺開発イメージ図)

 都市機能をさまざまな形で凝縮させた「コンパクトシティ」を実現するための都市開発が近年、増えている。その具体的手法の一つが「公共交通型開発」とも言われるTODだ。
 住宅やオフィスなどを駅の徒歩圏内に設置することで、職住近接の効率的な生活を送れるようにするのが「コンパクトシティ」の特長の一つであり、高齢者や障害者にとっても移動にかけるエネルギーが少なくて済む。さらにTODは公共交通機関の利用を前提に行われる都市開発のため、自動車への依存度が低くなる。そのためCO2の排出量を減らせ、地球環境にも優しい都市を実現できる。
 実は、こうした街づくりは日本のお家芸とも言える。日本では100年以上前から鉄道会社が沿線開発の一環として、各駅を中心に住宅地や商業施設などを整備して利用者を誘致してきたからだ。

 このような日本型TODは現在も進化を続けている。例えば、東京・渋谷。この地では今、「100年に1度」と言われる大規模な再開発が行われている。地形の高低差や街の分断など、渋谷の抱える課題を解決すべく、地下・地上の複数のレベルで駅と建物をつなぎ、立体的な歩行者ネットワークを構築し、訪れた人の利便性や快適性の実現を目指している。こうした「駅まち一体開発」は成熟した市街地の再生とも言え、日建設計もこの渋谷の街づくりに2000年ごろから関わり、渋谷ヒカリエや渋谷スクランブルスクエアなどの設計にも携わってきた。

渋谷開発の断面イメージ

7路線に1日40万人!
中国初の立体TODが進行中

広州凱達爾交通ハブ国際広場プロジェクト
@中国・広州

Cadre International TOD Center

 日本で長年行われてきたTODの手法が今、魅力的な都市開発を目指す海外からも熱い注目を集める。経済発展の著しい中国もそうした国の一つだ。広州市内から東に約30キロ離れた新塘という都市で新幹線やインターシティ、地下鉄など7路線が乗り入れる交通施設と、オフィス、ホテル、商業施設などを一体的に整備する中国初の立体TODプロジェクトを日建設計が担当している。

渋谷ヒカリエ、
クイーンズスクエア横浜の完成度に目を見張る

 2015年から始まった大型複合プロジェクトは、2019年末に駅が開通し、低層に入る商業フロアが2020年半ばにオープン。20年末には全体の施設が完成する予定で、1日に約40万人が利用する交通ハブとなる。

駅と施設の動線を見直した日建設計の提案

 「我が国にとっても初めてとなる大型のTODプロジェクト。様々な課題が出てくる中、唯一、日建設計だけが常に前向きな解決策を示してくれました」と事業者の広州凱達爾投資有限公司 常務副総裁の陳漫宇さんは話す。

 実は英国の設計会社によって実施設計が終わり、プロジェクトは着工直前だったという。そうした中でTODに関するコンサルタントに入った日建設計が計画を精査すると、駅とまちの一体化が不完全で動線が混乱し、交通機関の乗り換えが非効率な点などが見つかった。「その報告と同時に計画の改善案を作ってくれたことに感銘を受けました。商業施設と交通ハブとして導線が緻密に練られていて、その提案に当社のチームが一目ぼれしてしまったんです」と陳さん。

 結局、当初の着工予定を延期し、ゼロから設計を見直し、日建設計に正式な設計依頼を行うことに。

 陳副総裁は日本をたびたび訪れ、日建設計の手がけた渋谷ヒカリエやクイーンズスクエア横浜といった公共交通と商業施設などが一体となった開発をつぶさに視察し、その完成度の高さに目を見張ったという。「設計をお願いするにあたって、NIKKENというブランドの安心感もありました」

広州凱達爾投資有限公司
常務副総裁
陳 漫宇

緑豊かな空中オアシス 
都市を象徴する「顔」に

 このプロジェクトの設計を手がけた日建設計でダイレクター ・アーキテクトを務める丁炳均さんは「TODの手法を一歩進め、駅の敷地だけに留まらず、街全体のスケールで都市機能を再配置し、人口の過密化や交通渋滞、そして環境汚染といった駅と街の抱える課題を一体的に解決できるように考えました」と話す。多様な都市機能を高密度に積み重ねていくことで、鉄道駅と都市の一体化を図り、街の回遊性を高めることを目指したという。

日建設計 ダイレクター・アーキテクト
丁 炳均
従来の駅と街の開発モデル
TODによる駅と街の一体開発モデル

 中国ではここ十数年で約500の鉄道新駅ができ、2020年末までに日本の約10倍の長さの高速鉄道網が敷設されるという。今後10年間はこうした勢いが続くとみられており、「中国は、公共交通と一体となったまちづくりの実験場のような状況です」と丁さんは指摘する。

 「さらに街としての効率性だけでなく、このプロジェクトがインパクトのある『顔』としての役割を担い、都市のアイデンティティになるような開発も心がけました」と丁さん。参考にしたのが、広州周辺に広がる「羊城八景」として知られる積層岩の絶壁が連なる雄大な自然景観。その有機的なデザインをビルに取り入れ、最先端の駅と自然豊かな緑の谷が融合した「新羊城八景」を生み出した。「屋上に設けたテラスは緑に覆われ、都心に浮かぶ空中オアシスのような憩いの場になるはず」と丁さんは近づいてきた施設の完成に目を輝かせた。

2020年末に完成予定

 このTODプロジェクトは、日本での蓄積と経験をいかして、中国だからこそできるダイナミックで大規模な複合建築の魅力を発揮することに成功した。その点で、「これまでより一歩進化したTODモデルになった」と丁さんは話す。「このプロジェクトが一つのきっかけとなり、さらに進んだ駅まち一体開発に発展していくはずで、日本国内で模索している次世代のTODのあり方のヒントにもなると思っています」

IoT・人工知能・顔認証…
「最先端の複合型ニュータウン」

スマートシティ開発プロジェクト
@ベトナム・ハノイ

 TODに代表される日本型都市開発の輸出に加え、日建設計ではスマートシティの海外展開にも力を入れている。ベトナム・北ハノイで2020年にも着工予定のスマートシティの開発計画もその一つだ。住友商事とベトナムの大手不動産投資会社によりハノイ市郊外で約270ヘクタールのスマートシティ開発が計画されており、その第1期部分のマスタープランを日建設計が担当した。戸建て住宅、高層マンション、商業施設などを順次建設し、ハノイにおける大型規模の都市開発になるという。

 IoT、省エネルギー化、脱車社会など、スマートシティの知恵と技術を導入しながら、賑わいと緑にあふれた住みやすいニュータウンの実現を目指すという。日本政府もスマートシティの海外展開を強化する方針を決めており、ハノイのプロジェクトは日建設計が培ってきた高度な技術力を世界に向けて発揮する格好の機会となりそうだ。

都市の成長を
“設計の叡智”で支える日建設計

 東京スカイツリー、東京ミッドタウン、さいたまスーパーアリーナなど誰もが知っているこれら建築の共通点とは?答えはいずれの設計も日建設計が手がけていること。日本では、国内外で活躍する個人の建築家に脚光が集まりがちだが、実際は、都市を構成する建築物の多くを日建設計のような組織設計事務所が手がけている。

 1900年に創業した日建設計は、建築の設計・監理や都市デザインを手がける日本最大の建築家集団だ。グループ全体で約2800人の社員を抱え、手がけたプロジェクトは2万5000件超にもなる。英国の建築雑誌「BD World Architecture 100」では建築設計事務所の2020年の世界ランキングで2位になっている。

 日建設計が1990年頃より中国から始めた海外事業は、今日までに世界約50か国250都市に及び、それぞれの地域で、持続可能な発展に寄与する数多くのプロジェクトに携わっている。世界の各都市が抱える問題は実に多様で、都市化の進展により、その課題はますます複雑化している。そうした中、日本での多種多様な経験を踏まえつつ、自然エネルギーの利用や交通システムの構築など、建築・都市デザインにかかわる幅広い分野で最先端を切り開いてきた「NIKKEN」の取り組みがいま、世界から注目を集めている。