YOMIURI BRAND STUDIO
Canon

SCROLL

躍動するアスリートたち
その「一瞬」を捉える

奇跡の瞬間は二度とやってこない
だから、信頼できる一台を選びたい

スポーツフォトグラファー

YUTAKA

キヤノンマーケティングジャパン株式会社

津幡圭佑

  • EOS-1D X | EF600mm F4L IS II USM

    Chapter 1

    常にどこで何が起こるか分からない。それを追いかけているのがすごく楽しい

    スポーツ写真を撮るということ

    本日はお話をお聞きできるのを楽しみにしておりました。よろしくお願いいたします。YUTAKAさんとは、所属先企業を担当させていただいているご縁で2010年ごろから撮影現場でお会いしています。私が初めてお会いした時には、すでにトップフォトグラファーだったYUTAKAさんですが、なぜこの道に進まれたのでしょうか。

    こちらこそよろしくお願いします。そうですね。子どものころから音楽が好きで、音楽の学校に通っていました。写真には、興味を持っていなくて、「自分で撮ろう」という気がありませんでした。カメラに触ったことすらなかったです。

    お父様で写真家の水谷章人さんのすごい作品がご自宅にたくさんあるわけですよね。それでも、写真を撮ろうとは思わなかったのですね。

    父は僕が幼いころから、ずっと忙しくしていて外国に行ったり地方に行ったりで、1年の半分は家にいませんでした。父の仕事についても「そういう仕事があるのだな」というくらいの認識でした。父の会社で経理を担当していた母が体調を崩し、「母を助けたい」という思いから父の会社とかかわるようになりました。その際、「少しくらい写真を撮れるようになって手伝おうかな」という気持ちで、写真を撮り始めました。25歳ごろのことです。

    初めて行った撮影を覚えていますか。

    ラグビーの早明戦でした。ちょうど、キヤノンのデジタルカメラ「EOS D30」が登場したばかりのころです。その時の写真を見た父に「上手だな」とほめられました。それで、自分は「うまいのかな」と思い、翌週にサッカーの試合の撮影に行きました。試合は天皇杯だったと記憶していますが、難しくて全く撮れませんでした。ボールがどこに動くのか予想できず、撮った写真には「ボールが入っていない」状態でした。最初はおだてられて、その後、ズドンと落とされました。「写真が撮れていない」ことがすごく悔しくて、その翌年からダブルヘッダー、トリプルヘッダーで撮影に行くようになりました。

    僕の中では、YUTAKAさんの写真はサッカーのイメージがあります。

    コロナ禍で自由に動けない時に、僕自身も「サッカーの写真を撮るのが好きなのだなあ」と気づきましたね。常にどこで何が起こるか分からない。それを追いかけているのがすごく楽しいです。撮り始めたころは想像もしていなかったけれど、選手の蹴る角度や力の入れ具合で、ボールがどの位置に飛んでいくかがわかるようになりました。ボールが飛ぶと予想される位置にいる選手にピントを切り替えて、待ち構えてトラップの瞬間をとらえたりできるようになりました。

    サッカーの試合の撮影は、僕自身も経験がありますが、ボールの動きを見通すことができないと難しいですよね。

    サッカーの試合の撮影を重ねるうちに、選手の蹴り方、蹴る強さまで分かるようになり、こうした動きがわかると、ますます面白くなりました。今の会社に入ったのもサッカーの取材が縁です。ちょうど入社して2か月の時期に、アメリカのメジャーリーグの撮影に単身で行く機会をもらいました。「できるわけがない」と少し反発しながらも実際に現地に行ってみたら楽しくて仕事のモチベーションになりました。仕事は大変なことを乗り越えると、また楽しい流れがきます。そういうものの積み重ねで今まできていると感じています。

  • EOS-1D X | EF400mm F2.8L IS II USM

    Chapter 2

    何がすごいかというと、「撮りたくなってしまう」こと

    リスペクトすべきアスリート達

    試合を誰よりも一番近くで見ていると思いますが、撮影中はどんなことを感じますか?

    印象に残っているのは、スーパースターはみんなすごいと感じたことです。何がすごいかというと、「撮りたくなってしまう」ことですね。スーパースターの選手は自然とカットが増えて、自分の中でも「この人で一つの組み写真をつくりたい」といった具体的なイメージが湧いてきます。

    ご自身の中で魅力を感じる選手はいらっしゃいますか。

    サッカーで一番好きなのは、中村俊輔選手です。蹴り方がすごくきれいです。リオ2016大会では、体操の内村航平選手を撮影させていただきました。被写体としてやっぱり魅力的です。

    撮影しなければならないのに試合を見入ってしまったことはありますか。

    今はほぼないですが、最初のころはサッカーの日本代表チームの試合を見入って撮影に集中できないことがありました(笑)。「今のゴール決めたのは誰だろう」などとファンとして試合展開が気になってしまいました。もちろん今もいい瞬間に立ち会えた時は気持ちが熱くなります。僕自身、試合中、撮影しながらつい歓声を上げることがあります。

    YUTAKAさんは、冷静に撮影し、冷静に帰っていく印象がありました。試合会場では、選手の声も聞こえるものですか?

    選手の声や息づかい が聞こえますよ。サッカーであれば、選手が指示を出している声やボールを蹴る音ですね。特に観客がいない試合では、よく聞こえますね。

    確かにYUTAKAさんの写真からは、音を感じます。写真によって違いますが、水しぶきから激しい音を感じることもあれば、逆に静かで全く音を感じさせない作品もありますよね。

    バタフライや背泳ぎの写真は、僕のしぶき感が出ていますね。水しぶきから音を感じる一方で、時が止まっているような写真を撮る時もあります。
     水しぶきを通して、アスリートの動き、力強さ、音を感じさせるために、スローシャッターで何十回も何百回も撮ることがあります。一回では思い通りにいかないから何回も撮ります。そしてようやく思い通りに撮ることができたらうれしくなります。
     写真は、完璧にいつも撮れているわけではないから、次にまた撮りたいという気持ちになります。カメラが良くなりすぎると、撮る立場からすると面白くない面もあると思います。僕自身、サッカーの試合で、最初からボールを上手に撮影できていたら写真に対するモチベーションが上がっていなかったと思います。仕事としてはいつも狙った通りに撮れてほしいという思いもありますが、そうじゃないから楽しいですね。

  • EOS-1D X Mark II | EF70-200mm F2.8L IS II USM

    Chapter 3

    SNS対応で、すごくスピードが求められる

    時代と共に変化する「在り方」

    最近は撮影に関するオーダーや作品の納品先も 変わってきていますか。

    WEB媒体が増えてきていますね。SNS対応で、すごくスピードが求められることがあります。その場合、撮影してなるべくすぐに送っています。いろいろな場面を撮影しているので、ちゃんと見て選んで送りたいのですが、どうしても写真を見る時間を削ることになります。

    撮りに行く前からSNS用のオーダーもあるわけですね。

    そうですね。その場合は、写真を送信するまでの時間を短縮するために、「レーティング」と呼ばれる機能も利用するようになりました。撮影後すぐに写真に評価をつけてチェックを入れておくことで、その評価をもとに写真をセレクトして出せるようにしています。飛び込みでは、選手を撮った後にすぐにチェックして、次の選手が飛び込むまでに終わらせます。
     撮影した写真は、会社のアーカイブにアップします。そこからお客さまがダウンロードし、早ければ撮影してから10分から15分後にWEBメディアなどで一般に公開されています。本当は撮ることに集中したいし、じっくり写真をセレクトしてから送りたいと思いますが、そういうことも求められる時代になったと感じています。スピードや作品性など大会によって重視されるものは違いますが、オリンピックは明らかにスピード重視です。スピードと作品性どちらを重視するかを見極めながら写真を撮っていますね。

  • EOS-1D X | EF400mm F2.8L IS II USM+ EXTENDER EF1.4×III

    Chapter 4

    「自分と被写体が一つの大会」を表す写真を、どうやって組み立てるか

    スポーツフォトグラファー
    という仕事

    スポーツフォトグラファーは選手たちの「二度と来ない一瞬を切り取る」仕事ですよね。撮影前にはどんな準備をされているのですか。

    例えば、競泳では、「こちら側の向きでしか息継ぎをしない」という選手もいます。息継ぎの向きも気にします。他にも、体操の内村航平選手を撮影する場合は、鉄棒で最後のガッツポーズを正面から撮りたいので、必ず構成を調べておきますね。ただ、何年か前の世界選手権で内村選手が本来の構成とは逆方向に着地してしまい、背中越しに撮らざるを得ない時もありました。 こういったアクシデントなどで構成が変わることもありますから100%ではありませんが、確率を上げるための努力をしています。

    撮影場所はどうやって決めていますか。撮影場所で他のカメラマンの方との違いを考えたりしていますか。

    僕は「自分がこれを撮りたいからここにいる」という気持ちでいます。周囲は関係ないですね。「自分と被写体がどうやって一つの大会を表す写真を組み立てるか」を考えて動いています。

    オリンピックの撮影でプレッシャーはありますか。

    今は、プレッシャーはないですね。プレッシャーなんて感じなくてよいと思っています。失敗する時はするけれどもそこに至るまでの準備はしっかりしているので、「だめな時は仕方がないよね」という気持ちで挑んでいます。競技にも通じますが、常に練習どおりにできるようにする本番のための準備を大事にしています。

  • EOS-1D X Mark II | EF24-70mm F4L IS USM

    Chapter 5

    EOSと一緒に世界中を旅しています

    愛機へのこだわり

    YUTAKAさんの愛機をご紹介いただけますか。

    キヤノンのデジタル一眼レフカメラ「EOS-1D X Mark III」を2台愛用しています。一番、メインレンズは、400ミリの超望遠レンズを使っています。ズームの幅がきかないので、動ける範囲で動いて撮っています。もう1台は100~400ミリの望遠ズームレンズを使っています。あと1台が「EOS R5」です。ふだんの撮影では主に3台を使っています。すべてEOSです。

    400ミリのレンズは、スポーツフォトグラファーの方にとっては、標準レンズとして使い慣れている方が多いかもしれないですね。暗い中でもカメラのISO感度を上げなくても速いシャッタースピードを切れて被写体を止めることができます。3台持ちは、メインのカメラに一脚を取り付けて構えて、他の2台を両肩にかかえて撮影するイメージですね。
    EOSを使っている理由、またお気に入りのポイントを教えてください。画質、オートフォーカス(AF)、レンズ、操作性などはどうでしょうか。

    もともと家にあったカメラがEOSでとても愛着があります。慣れが一番大事ですね。他のカメラも使ったことはありますが、僕自身、必ずEOSに戻ってきますね。
    お気に入りのポイントは全部ですね。「ここをもっと直してよ」というのは、その都度、変えてくれています。要求にこたえ続けてくれるから、こちらもこたえ続ける形でそのままEOSを使い続けています。

    ありがたいですね。撮影でずっとEOSと一緒なんですね。

    世界中、いろいろな場所に行っていますが、昨年は日本全国、47都道府県を制覇しました。世界では大陸でみると残っているのは、南極大陸だけです。それくらいEOSと一緒に世界中を旅しています。

    EOSは極端なことを言うと、 南極でも動くよう試験を重ねています。暑いところでの熱対策や、 寒いところではバッテリートラブルなどが発生しないようにしています。「EOS-1D」は、カメラの我々が持つ技術を結集したフラッグシップカメラです。

    これまで炎天下でも大きなトラブルはありません。飛行機の機内持ち込みのリュックに入りきらない時に、2台目のカメラをスーツケースに入れることがありますが、ボディが強く安心です。

    EOSは幅広いラインナップで機種ごとに特色があり、プロ、写真愛好家をはじめ、いろいろな方に使っていただけます。コンパクトさを重視し、タッチパネルで操作する世代に向けたものもあります。機種によって操作性が変わることはありません。その点がEOSで統一している魅力だと思っています。
     どんな撮影もこなせるオールラウンダーとして写真家のみなさんに人気があるのが「5」です。「EOS 5D」シリーズは、初代「5D」から「Mark II」、「Mark III」、「Mark IV」と続き、フルサイズミラーレスカメラ「EOS R5」も加えた「5」の系統は、動きのある被写体の撮影にも強いAF機能があり画素数も多めになっています。

    僕も「EOS R5」は仕事で使う3台目として、「EOS-1D X Mark III」と一緒に持ち歩くのに重宝しています。

    かつては毎年のように機種が新しくなるなど、カメラの進化の度合いが大きい時代もありました。ただ、ここ数年でカメラやPCなどの精密機器はある程度成熟してきたと感じています。目に見えるスペック上の数値ではあまり進化していないと感じられるかもしれません。そんな中でも撮影領域の拡大をテーマに、今まで撮影できなかった写真や被写体にチャレンジしていただけるよう日々開発を続けています。「EOS R5」もスポーツ撮影の可能性を拡げられたらうれしく思います。スポーツ写真はとりわけ難しいジャンルですが、チャレンジしたいと思ってもらえたらうれしいですね。

  • EOS R5 | EF16-35mm F4L IS USM

    Chapter 6

    選手が見せるすごい瞬間が1日のうちに何度も自分のそばで生まれている

    魔物も棲む、特別な舞台

    国際イベントは色々と他にもありますが、オリンピックはそういった大会とどこが違うのでしょうか。大会取材中はどんな気持ちで過ごしていますか。

    オリンピックのようにいろいろなジャンルの一流の選手が一堂に会する大会は、ほかにはありません。選手のモチベーションが違います。選手がそれだけの気持ちで挑んでいる大会だから、撮影する僕たちも気持ちが入ります。

    オリンピックでの選手の活躍をきっかけに、競技そのものが注目されることも多いですね。ところで、オリンピックには、フォトグラファーにとっても魔物が棲んでいるのでしょうか。

    フォトグラファーにとっても魔物はいますね。僕自身はオリンピックの取材を何度も経験し、魔物への対処法がわかるようになりました。魔物はいるのだから「魔物とどう戦うのか」を準備した方がいいと考えています。また、選手にとって僕らが魔物になっているかもしれないと思う時もあります。例えば、アーチェリーでは、予選で選手の間近でカメラマンが写真撮影を行うため、会場にシャッターの音が鳴り響きます。通常の大会でそんなに間近で撮られることがないため、選手にとっても全く違う環境だと思います。そうした競技環境は、まさにオリンピック独特のものです。

    オリンピックでは、魔物とどう戦うかも大切なのですね。

    僕自身も初めてのオリンピック取材の時は、すべてが魔物でした。会場も魔物です。オリンピックでは、撮影で訪れているカメラマンの数が他の大会と比べて圧倒的に多くなります。会場の中での動き方を知らないと動きが遅くなり、うまく撮影できなくなります。僕はこうした経験を次の大会に生かしながら、オリンピックの魔物対処法を身に付けることができました。

    スポーツフォトグラファーにとってオリンピックはどんな存在なのでしょうか。

    オリンピックは選手にとって一世一代の舞台です。それは、僕たちスポーツフォトグラファーにとっても同じです。選手が見せるすごい瞬間が1日のうちに何度も自分のそばで生まれています。だから僕は、ずっとテンションが上がっています。オリンピックは、スポーツフォトグラファーにとって特別な場所です。

  • EOS-1D X Mark II | EF400mm F2.8L IS III USM

    Chapter 7

    EOSは、僕のチームメートであり「相棒」

    これからも、ともに撮り続ける

    オリンピック期間中は、大体、多い時で1日に4競技を取材しますから、撮影枚数は1日で数万枚に上ります。いつもカメラを相当、酷使していますが、よく耐えて頑張ってくれていると思います。

    EOSをトップフォトグラファーの方に使っていただけるのは、とてもありがたいです。

    僕にとってEOSは頼れるチームメートです。このカメラがなかったら僕の仕事は成り立たないですから。「この瞬間を切り取る」という仕事のためになくてはならない存在です。

    「カメラは道具で命がない」ととらえることもできますが、YUTAKAさんのように使っていただけると、カメラに何かを宿してくれているのかなという気持ちになります。使い手の意図を汲んで、「ちゃんと意図どおりに動いてくれ」と祈りを込めて使っていただければいいなと思っています。

    もっというと、EOSは、僕のチームメートであり「相棒」ですね。

    僕らとしても、「相棒」と思ってもらえたらとてもうれしいですね。

     これまで多くの競技会場でYUTAKAさんが撮影される際、カメラにトラブルがあるとキヤノンのブースに来ていただき、修理したり代替機を貸し出したりする形でかかわらせていただきました。これまでじっくりお話しする機会がなかなかとれなかったので、YUTAKAさんがどんなインスピレーションを感じて何を撮りたいと思ったのか、また、そこに至るまでのお話をずっとお聞きしたいと思っていました。ありがとうございました。

PHOTOGRAPHER

YUTAKA

1974年東京都出身。
1995年東京工学院専門学校卒業後、㈱マイスポーツ出版でアシスタントを経て、99年カナダに渡る。 2000年帰国後、サッカー、ラグビーを中心にフリーランス活動を展開。 2002年よりアフロスポーツに所属。