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米倉 誠一郎(法政大学大学院教授):何よりも生の声を聞いていきたいと思います。まず、皆さんの自己紹介から。

米倉 誠一郎

法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授

米倉 誠一郎さん

ジュヴェンシア・デスシャン・ラライ・ハリソア(名古屋商科大学大学院卒):マダガスカル出身です。JICAの研修生として名古屋商科大学のビジネススクールで学び、今は東京の再生可能エネルギーの会社で働いています。

ジュヴェンシア・デスシャン・ラライ・ハリソア

名古屋商科大学大学院卒 マダガスカル出身

ジュヴェンシア・デスシャン・ラライ・ハリソアさん

鈴木 政司(FD社長):太陽光発電施設の設置事業などをしており、「電気の必要なところに電気を届ける」という経営ビジョンを掲げています。JICAから情報を得て、アフリカ人留学生を受け入れ、その後社員としても迎えています。

鈴木 政司

株式会社FD 代表取締役社長

鈴木 政司さん

米倉:企業規模はどのくらいですか。

鈴木:30人に満たない程度です。実際アフリカ人を雇用したことは自信と安心感につながりました。お金に換えられない価値になったと実感しています。

米倉:私たちの期待どおりの“美しい”効果ですね。

アベウォノ・ヘルトン・ヤウォヴィ(名古屋工業大学大学院):2018年に西アフリカの小さな国、トーゴから研修生として来日しました。人工知能(AI)を学んでいます。研修をしているテントの会社では、アフリカ市場の情報を提供しています。更には会社のCEO(最高経営責任者)から、AIを事業に採り入れるアイデアを求められています。

アベウォノ・ヘルトン・ヤウォヴィ

名古屋工業大学大学院 トーゴ出身

アベウォノ・ヘルトン・ヤウォヴィさん

米倉:どうしてその会社を選んだのですか。

ヘルトン:専門知識を生かすため、ソフトウェア企業での研修を希望していましたが、うまくいかず、テント会社になりました。しかし今は満足しています。AIについても仕事で貢献できているからです。

米倉:テントとAIの新しい組み合わせが生まれそうです。

井上 真二(音羽電機工業取締役・アフリカ事業室担当):避雷器設置などの雷対策をする会社です。かつてJICA事業のアフリカ人学生を研修で受け入れた時に、アフリカ中部で雷が多いことを知り、事業につながりました。今では受け入れた留学生がルワンダに帰国し、現地で技術者として私たちの事業を支援してくれています。

井上 真二

音羽電機工業株式会社 取締役 アフリカ事業室担当

井上 真二さん

米倉:現在就職活動中の人もいますよね。

タギー・アルディーン・アブダルモニエム・アフメドモハメド(名古屋工業大学大学院):スーダン出身です。最近、東京のソフトウェア開発会社に就職が決まりました。日本人は「頑張る人たちだ」というイメージがあり、そういう日本人に出会いたかったので日本に来ました。日本の力強い戦後復興の歴史に学びたかったのも、留学の理由の一つです。

タギー・アルディーン・アブダルモニエム・アフメドモハメド

名古屋工業大学大学院 スーダン出身

タギー・アルディーン・アブダルモニエム・アフメドモハメドさん

米倉:どうやって就職先を見つけましたか。

タギー:簡単ではなかったです。就職活動で面接を多く受けましたが、文化の違いに直面し「日本で働くには文化を学ばなくては」ということに気づきました。自分が育った価値観を多少犠牲にしても、日本文化を理解すれば、慣れることもでき、ベストも尽くせます。

藤田 香(日之出産業取締役):私たちは水処理の会社です。微生物の研究や薬剤の製造などをしています。今後の成長を見据えると、海外市場が重要です。自分たちが強みを発揮できるのは海外だと考え、JICAの研修生を39人受け入れ、男女2人を正式採用しました。

藤田 香

日之出産業株式会社 取締役

藤田 香さん

米倉:それは大変だったのでは。

藤田:社員が10人ぐらいの時に9人の研修生を受け入れました。事業環境の変化は激しく、それくらい大胆に踏み切らないと成長できないと思いました。仕事の最終目標は、ビクトリア湖の浄化だと公言しています。

鈴木:私たちは、社員20人もいない時に、7人の研修生を受け入れていました。今振り返ると、特別扱いしなかったのが良かったかなと思います。私は社内で日本語を話し、英語を話せる社員は、英語で話しました。留学生も研修中にかなり日本語力が向上したはずです。日本企業で働く以上は、歩み寄りが必要です。そして何より経営理念に共感してほしいです。

ヘルトン:私は研修時に上司が英語を話してくれたので、企業側の配慮としてありがたかったです。

米倉:お互いの思いやりと譲歩は必要ですね。

タギー:妥協は大事です。ただ私にとっては、日本のコンビニでおにぎりを買って食べることすら大きな挑戦でした。留学生側にも歩み寄りが足りないこともあると思いますが、日本人側も少し妥協してほしいです。中間地点で出会えれば理想的だと思います。

ジュヴェンシア:妥協は必要ですが、自分の価値観も大事にしたいです。もちろん私もたくさん努力をしました。

米倉:日本人は皆さんの価値や価値観を理解してくれないと感じますか。

ジュヴェンシア:時々難しいと感じます。ビジネスでは完璧な対応を求められるし、同時に外国人としての役割も求められます。失敗もします。いろいろ複雑です。企業で良かったこともありました。私は豆腐屋で研修をしました。そこには英語を話さない年配の日本人女性社員がいましたが、彼女は疲れる肉体労働も、文句を言わず働いていました。私は彼女の姿を見て、勤勉性と頑張ること、そして心をこめて仕事をすると報われるという大事なことに気づかされました。

米倉:企業側も受け入れ方として、妥協していくということがかなり重要のようですね。

井上:企業の中で活動するには、目標に向かっていく気持ちで一致することが大事だと思います。小さな違いはあっても「いいモノを作りたい」とか「いいモノを紹介したい」という気持ちでつながれます。

米倉:ビジョンの共有ですね。さて、研修生を受け入れたメリットは。

藤田:本当に世界が小さくなりました。日常的にアフリカの人と交流することになりました。帰国した人とも、インターネット端末で話をしています。

米倉:日本は高齢化が進みます。アフリカ人受け入れに問題はあっても、リターンも大きいです。明るく楽しい人材ですし、研修コストがかからないプログラムもあります。企業側もあまり構えずに、取り組んでみたらいかがでしょうか。留学生側も恐れずに日本社会に飛び込んでほしいと思います。(敬称略)

政府広報

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