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知ってた?
これがホントのパラオ人
特命全権大使がお教えします!

 太平洋に浮かぶ586もの島からなる共和国パラオ。日本の委任統治領だったことがあり、親日的なことでも知られています。現在は世界有数のビーチリゾートとして人気を集めていますが、第2次世界大戦中は日本軍と米軍の激戦地となり、双方多くの人が亡くなりました。2015年には、上皇ご夫妻が南部のペリリュー島を慰霊に訪れています。日常会話の中にも日本語がポンポン出てくるパラオの人たちの暮らしぶりとは?13年に日本に赴任したフランシス・マリウル・マツタロウ大使に教えてもらいました。

1

イチローさん、ヒロコさん、
ヒデオさん……

 「センキョ」「ベントウ」「マナイタ」……。日本統治の影響もあって、今もパラオ語の中に日本語に由来する単語がたくさん残っています。日常会話で使われる日本語のボキャブラリーは2割程度になるという調査もあります。
  名前もそう。イチロー、ヒロコ、そしてヒデオと日本語の響きを持つファミリーネームを持っている人もパラオには多い。私の「マツタロウ」も典型的ですね。「マツタロウ」は、日本ではファーストネームですが、パラオではファミリーネーム。「マリウル」がファーストネームでスペイン語の「マリオ」を意味します。「フランシス」はクリスチャンネーム。名前がダイバーシティそのものですね。
  元々、パラオに姓はなかったので、日本以外にスペインやドイツ、そしてアメリカなど統治を受けた国の影響を受けて姓を名乗るようになったのでしょう。
  生活文化も日本から大きな影響を受けています。お正月には日本と同じようにお餅を入れた「オシルコ」を食べるんですよ。花札を楽しむ年配の人もいます。

2

初めて出産したら、
ママは蒸し風呂へ

 パラオでは、初めての出産を盛大にお祝いします。出産した女性は、香辛料などを配合した蒸し風呂で産後のケアをしてもらいます。期間は5日から10日 までとじっくり時間をかけます。肌には薬膳由来のペーストを塗ってもらいます。このペーストを配合できる人はパラオでは数人しかいないと言われています。
 それから香り豊かなココナツオイルをつけ、花や華やかなベルト、スカートなどの伝統的な衣装を身に着け、子供を家族や友人にお披露目します。これは母系社会のパラオで、若い女性が社会にデビューする機会にもなります。
 同時に、出産した女性の母親側の一族が、自分たちの娘がいかに美しいかを夫側の親戚に見せ、二つの家族が一つになるという儀式的な意味合いもあります。その際、夫の親戚側から妻の親戚側に対してご祝儀を渡す伝統があります。
 女性たちは家庭を守るだけでなく、パラオの伝統を伝え、子供たちを教育する重要な役割も担っているのです。

3

家が買えちゃう
「ウドウド」もある!

写真提供:パラオ政府観光局

 パラオには独特の通貨があります。普段は米ドルでモノの売り買いをしますが、「ウドウド」という陶器やクリスタルガラスでできたビーズも、お金として流通しています。地域の有力者や女性は、ウドウドを黒いひもに通してネックレスのように身に着けます。初めての出産や葬式など、重要な行事の時は、一族のウドウドを集めて身に着けます。価値が高いウドウドは「イエク」と呼ばれ、一族の富を象徴します。もっとも、ウドウドがどうしてお金として使われるようになったのか、その由来はわかっていません。
 ウドウドに使われるビーズにはいくつかの形と色があり、大きなウドウドには名前がついていて、来歴をたどれます。家1軒買えるほど価値のあるものもあるんですよ。ですので、銀行の貸金庫で大切に保管する人もいます。
 ただ、現在は精巧な模造品が出回るようになり、ウドウドが本物であるということを証明するのが難しくなり、その価値は下がっています。
 亀の甲羅もお皿状に加工され、食器兼お金としての役割を果たします。この甲羅は葬式の時に香典の一部として使われます。

4

大統領だって、
「酋長」に相談するんです

 パラオは16の州からなる共和国で、直接選挙による大統領制(任期4年)を採用しており、三権分立も確立しています。
 一方で伝統的な社会慣習が残っていて、各地域の酋長や長老の権威が重んじられています。酋長は世襲で各州単位の酋長で構成される協議会もあります。そこで話し合われたことをもとに州知事や大統領に助言します。
 また、議論の分かれるセンシティブな法案を議会にはかる際も、あらかじめ酋長たちに相談して理解を得ておくと、議論がスムーズに進む場合が多いようです。
 こうした酋長たちが集まって議論をする場が「バイ」と呼ばれるパラオの伝統的な三角屋根の建物で、各村にあって市民ホールのような役割を果たしています。
 こうした話し合いから、環境保護を目的とした入国管理法が世界で最初に制定されました。義務ではありませんが、パラオを訪れる人は、「自然に消える以外の痕跡は残しません」といった、この島の生態系を乱さないことを誓う宣誓書に署名することが求められます。

5

「住所」なし……
郵便どうするでしょう?

 パラオは、南北約640キロにわたって586もの島が点在しています。大半が無人島で、人が住んでいる島は9島しかありません。人口は約2万1000人の小さな国です。
 住所も、私書箱の番号(P.O.Box)だけ。ストリートの名前や番地は必要ないんです。郵便は、唯一の郵便局があるコロール島の島名と私書箱の番号だけで届きます。
 パラオへは日本から飛行機で4時間ちょっと。チャーター便が頻繁に往来しています。時差もなく、日本人なら快適に過ごせるはず。
 2012年には、コロール南西部に浮かぶ「南ラグーンのロックアイランド群」が国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録されました。自然の豊かさに加え、紀元前3100年から人の生活した形跡があり、自然と文化の複合遺産になります。
 第2次世界大戦の激戦地だったペリリュー島へも簡単に行けます。美しい海と島々、そして豊かなシーフードを楽しめるパラオに、ぜひいらしてください。

フランシス・マリウル・マツタロウさん
(駐日パラオ大使)

1948年、ペリリュー島生まれ。ハワイ大教育学部卒。グアム大大学院修了。86~97年、パラオコミュニティーカレッジ 学長。2005~08年、パラオ副大統領府官房長官 。13年から現職。妻と1男2女。趣味は釣り、映画鑑賞など。

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