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世界は違っておもしろい

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知ってた?
これがホントのダイバーシティ
国学院大学・古沢教授が
お教えします!

 世界各地の暮らしぶりや生活習慣を通して多様な社会の魅力を紹介する「世界は違っておもしろい」シリーズ。インターネットの発達などで地球全体が均質化する一方、地域に根差した多彩な文化や生活習慣の大切さも再認識されています。そうした中で、「自然と共存し、海外の文化を柔軟に受け入れてきた日本の生活様式が、これからの社会のあり方にヒントを与えるかもしれません」と、国学院大教授で環境社会経済学が専門の古沢広祐(こうゆう)さんは話します。一種「ごった煮」とも言えそうな日本の多彩な文化が示す「違っておもしろい」社会の未来について、古沢さんに聞きました。

1

実は多様性ホットスポット、
JAPAN

 生物の多様性を守ることが、文化の多様性を守ることにつながると思っています。自然・動植物の多様性が食文化の多彩さにつながり、ひいては文化の多様性に大きな影響を与えるからです。
 その点、日本は「多様性のホットスポット(拠点地域)」なのです。実際、生物多様性は世界でも群を抜いていて、全国各地に多彩な郷土料理が残っているのもその影響です。正月に食べる雑煮にしても地域によって全く異なり、まさに多種多様です。
 そうした要素に加え、日本は、古代シルクロードの東端にあって、インドや中国などを経て伝来した仏教が神道と融合して神仏習合となったり、街並みも近代的な高層ビルと伝統的な木造の日本家屋が軒を連ねていたりします。日本には都市文化と農山漁村的要素が共存する多文化的な下地があるのです。
 一種の雑種文化と言ってもいい。こうした多様な日本の文化の根底には、融合と醸成とでも言うべき性格が秘められており、そこに他者に寛容で持続可能な社会を築いていくためのヒントがあると考えています。

2

島国だったからこその
「多様性」

 日本人は似た顔つきや体格で、均一な社会だと思い込みがちですが、実は明治以前は、藩が一つの国のようなもので地域によって多様な文化によって彩られてきました。
 さらに日本は大陸から海で隔てられ、文明国の辺境に位置するという地理的な事情によって、海外からの直接的な影響を受けずに多彩な文化が継承・醸成されてきたわけです。大陸では、中心的な国で政権が変わると前政権は完全に否定され、新しい政権によって新しい文化が上書きされるため、文化が継承されづらいのです。
 実際、日本で数千年のスケールで諸文化が流入し、各地に拡散し定着しています。水田での稲作文化の展開も興味深いもので、数百年ないし千年以上にわたり耕地の地力が維持されていること、多彩な醸造の文化や副産物のワラ利用の多面的展開などに、西洋の研究者などは驚くわけです。
 欧米を中心に多くの文明や文化が自然を征服することを目的としてきたため、森林や土壌を荒廃させてしまった。ところが日本の稲作文化は自然と一体化していて、「里山」に象徴されるように、それが途絶えることなく継承されてきた。そこに持続可能な社会を構築するための手がかりがあるのではないでしょうか。

3

「身土不二(しんどふじ)」って
知ってますか?

 自分の身体と自分の生活する土地がまったく別に存在するのではなく、互いに深く親密に関係していることを「身土不二」といいます。その土地でその季節にとれた自然の恵みを食べることが健康につながるという考えも含んでいて、今で言うところの「スローフード」を先取りした思想であり、日本の伝統的なライフスタイルになります。
 そうした文化を象徴し、はぐくんでいるのが日本の各地にある里山・里海でしょう。人間と自然が対立するのではなく、人間が自然に手を入れることによって、互いに共存共栄を図っていく。人間が節度、和を持って自然に介入することで、生物の多様性も維持されてきたのです。
 その伝統が今、「SATOYAMA」として、海外でもサスティナブルな社会を築いていこうという人たちに注目されるようになっています。その仕組みや思想・文化を世界の人たちが熱心に学ぼうとしているのです。

4

「キョウゾン」から始めてみよう

 地球温暖化対策への関心が高まるなど、今世紀は「環境の世紀」と言われています。18世紀以降、人口的にも経済的にも飛躍的な成長を遂げる中、環境破壊などの弊害も深刻になり、永続可能な発展の道筋を見出すことが大きな課題になっています。
 私たちもこうした動きに連動する形で、国学院大を拠点に2010年から「共存学プロジェクト」を本格的に始めました。私のような環境経済学者以外に、民俗学や宗教学、政治学などの他分野の研究者が参加する学際的な取り組みです。
 これまでは「共生」という言葉の方が、なじみがあるかもしれませんが、理想形としての「共生」を想定するのではなく、その前段階に光を当てて、より多様で多義的な関係性や潜在的可能性を浮かび上がらせたいと共存学プロジェクトを立ち上げました。01年9月11日に米同時テロが起き、「共生」という言葉が国際社会の実態とはかけ離れていると感じたことも影響しています。つまり、共生以前の様々な違いを受け入れ、お互いの存在を認め合う「共存」から出発しようと思ったわけです。

5

そっとしておいてあげる文化

 多義的という意味では、「おもてなし文化」と対極の「そっとしておく文化」の共存などもありますね。日本は人口密度が高いこともあって、互いに気づかいしないと問題が起きやすい。ただ、あからさまに気づかい合うのも何だかうっとうしい。そこであえて無視することが礼儀という感覚を持っているのかもしれません。「言わぬが花」というか、他人をそっとしておいてあげる文化があるんですね。例えば、日本人には電車内での居眠りやお化粧など、周囲を“無視”できる能力があります。
 もっとも、いいことばかりではなく、社会的弱者を無視してしまう傾向もあるため、注意が必要ですが……。
 私自身、たばこを吸いませんが、日本では相手になるべく迷惑をかけないよう、加熱式たばこが急速に普及していると聞きました。これも日本的ですね。そうした新しい商品の普及とともに、私たちの生活によりふさわしいマナーを生み出す必要があるように思います。その点で、このサイトのように世界各地のグッドマナーを比較する試みは、多様性を受け入れ学び合う、互いに共存していくための知恵とヒントが詰まっているように思います。

取材協力

CAFE STUDIO BAKERY
+ Ploom TECH
http://cafestudiobakery.tokyo/

所在地:
東京都千代田区大手町1-7-1
読売新聞ビル1F
営業時間:
月ー土 8:00~22:00
日・祝 8:00~18:00
定休日:
無休(年末年始を除く)

プルーム・テックのみ喫煙可

古沢広祐さん

1950年、東京生まれ。大阪大理学部卒業後、京都大大学院農学研究科に進学。有機農業や環境問題などを研究し、農学博士。国学院大経済学部教授。NPO法人「環境・持続社会」研究センター代表理事。著書に「みんな幸せってどんな世界・共存学のすすめ」(ほんの木)、共著書に「共存学1~4」(弘文堂)など。

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