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St. Patrick’s Festival

知ってた?
これがホントのアイルランド人
特命全権大使がお教えします! St. Patrick’s Festival

 2019年秋のラグビー・ワールドカップ(W杯)で、日本代表が奇跡の勝ち星をあげたのがアイルランドでした。ヨーロッパの西端に位置するEU加盟国ですが、英国に最も近い隣国としてブレグジット関連のニュースで、その国名を耳にする機会も増えました。人口約476万の国ですが、W.B.イェイツやサミュエル・ベケットなど計4人がノーベル文学賞を受賞しており、アイリッシュダンスも日本で人気です。文化的な魅力からアイルランドファンになる日本人も多いようです。そこで生活する人たちの暮らしぶりはどのようなものでしょうか?さまざまな国や国際機関で大使を歴任してきたポール・カヴァナ大使に聞きました。

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ケネディもクリントンも、実は……

 19世紀後半以降、自由と経済的な機会を求めて多くのアイルランド人が英語圏の国に移民しました。特に米国には多くのアイルランド人が移り住み、さまざま分野で活躍してきました。例えば、大統領。現在までの歴代45人の大統領のうち、約半数がアイルランド系で占められています。ケネディ、ニクソン、レーガン、そしてクリントン大統領がアイルランド系で、オバマ大統領も母方はアイルランド系です。
 アイルランドは英国がEUを離脱した今、首都ダブリンは英語を公用語とするEUで最大の都市となりました。その英語を使ったコミュニケーション能力の高さと、アイルランド人特有のフレンドリーな気質が米国をはじめ世界中で受け入れられてきました。実際、3月17日に米国で行われるセント・パトリックス・デーが「緑の祝日」とも呼ばれ、ニューヨーク・マンハッタンではアイルランドよりも盛大なパレードを行い、街が緑一色に染まります。大リーグでも春季キャンプ中、この日に行われる試合では、選手たちが緑色の帽子をかぶって対戦するほどです。
 現在では多くの移民を受け入れています。起業家精神を応援し、雇用も促進しており、仕事を求めて世界中から人々がやってくるのです。今やアイルランド居住者の約17.3%が国外で生まれています。
 このようにアイルランドは多様で開かれた国なのです。ですから、EUから離脱した英国と違い、アイルランドはEUの一員であることが大切だと考えています。
 ある調査では、9割以上の人が「EUに残りたい」と答えています。アイルランドは世界規模のネットワークを持っており、国際社会からの孤立は望んでいません。

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欧州で平均年齢が一番若いんです

 アイルランドは今、活力にあふれています。高齢化が進む先進国もある中、アイルランドの国民の平均年齢は37.4歳 と、欧州でも若く、人口の伸び率も欧州で2番目なのです。大学の授業料は無料で、そこで学んだ若い世代が良質な労働力として国を支えています。
 アイルランドは英語圏であることから、アイルランドの伝統や魅力などについての情報を世界に向けて発信しやすいのです。
 そうした活力の源の一つとなっているのが、多様性を重視する国の方針です。2015年には、国民投票で同性婚を認めた世界初の国となりました。これを機に、国連が性的マイノリティーの総称として使っているLGBTI(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー・インターセックス)に対する理解が深まり、若い世代の政治に対する関心も高まりました。もちろん、性的指向やジェンダーによって差別することも法律で禁じられています。

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現大統領が「詩人」というお国柄!

 英語圏ということが、アイルランド文学が世界で評価されていることにもつながっているのではないでしょうか。イェイツ、ジョージ・バーナード・ショー、ベケット、そして詩人のシェイマス・ヒーニーはアイルランド出身のノーベル文学賞の受賞者です。さらに「ガリバー旅行記」のジョナサン・スウィフト、「サロメ」のオスカー・ワイルドに加え、ジェイムズ・ジョイスは「ユリシーズ」などの著作で現代文学に大きな影響を与え続けています。
 実際、詩人が社会的に尊敬を集める国柄で、現大統領のマイケル・ヒギンズは優れた詩集を出版している詩人でもあります。
 アイルランドの伝統的な音楽も、移民たちが世界中に広げ、影響を与え続けています。国章もハープがモチーフ。国章とは向きが反対ですが、ギネスビールのロゴもハープだと知っている人もいるかもしれませんね。楽器が国の象徴になっていることからも、アイルランドがいかに音楽と固有の伝統文化を愛しているかをわかってもらえるのではないでしょうか。

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人口の5倍もまかなえる産業3本柱

 アイルランドではジャガイモがよく食べられています。昔は主食と言ってもよかったほどです。現在でも伝統料理のアイリッシュ・シチューにはジャガイモがたっぷりと入っています。もっとも、現在は食も多様化が進んで、アイルランドでも和食が人気です。
 今では食品産業の規模も大きく、牛肉、魚介類、そして乳製品が3本柱。その生産量は、人口の5倍に相当する2500万人分を食べさせられる規模で、輸出にも力を入れています。
 それから、アイルランドといえば、やはり黒ビールのギネスではないでしょうか。世界中にあるアイリッシュパブで定番の飲み物です。世界で一日に約1000万杯のギネスが消費されていると言われています。ダブリンにある醸造所は外国人が多く訪れる観光名所にもなっています。私の祖父もギネスで働いていたので、子供のころから伝統のあるギネスには親しみがありました。もちろん、飲み始めたのは大人になってからですよ!それに、アイルランドはその他のビールやウイスキーでも有名で、ジェムソンは世界で最も成長の著しいウイスキー会社の一つです。近年はアイルランド人もワインをはじめとする外国産のお酒も飲むようになりました。

写真提供:アイルランド政府観光庁

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皆さん、“聖地巡礼”にお越しください

写真提供:アイルランド政府観光庁

 「静かなる男」、「ブレイブハート」、「キング・アーサー」、「プライベート・ライアン」、「ハリー・ポッター」シリーズ、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」、世界中で人気となった米国のテレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」。
これらの映像作品に共通するものは?答えは、いずれの作品もアイルランドがロケ地になっているということです。
 政府が母体となった「アイルランド映画委員会」が映画産業の振興に力を入れています。「映画映え」する雄大な自然が残り、アイルランドで撮影された映画に対する減税措置もとられているため、外国の映画会社からロケ地として選ばれるようになりました。
 こうしたロケ地は観光地にもなっていっていて、多くの映画ファンが訪れます。例えば、「フォースの覚醒」の舞台となったアイルランド島南西部沖にある孤島、スケリッグ・マイケル島は世界遺産でもあり、夏場には多くの観光客が訪れるようになりました。こうしたロケ地を訪ねるツアーも企画されています。アイルランドを訪れる人の目的が、ロケ地を巡る「聖地巡礼」というケースも増えています。また、アイルランドは素晴らしいアニメーション映画も制作しています。

ポール・カヴァナさん
(駐日アイルランド大使)

1956年生まれ。アイルランド国立大学ダブリン校で現代史とフランス語を学び、77年に文学士号取得。アイルランド防衛省を経て、78年に外務省入省。駐フランス、駐中国、駐アラブ首長国連邦、およびニューヨークの国連本部大使などを経て、2018年から現職。日本への赴任は1996年から98年まで務めた国際連合広報センター所長以来2度目となる。妻との間に弁護士と銀行員の息子が2人。

・3月17日は、セント・パトリックス・デー!
 アイルランドのナショナルデーで、5 世紀にアイルランドへキリスト教を伝えた聖パトリックにちなんだ祭日。アイルランドでは1500年以上に渡って祝われており、アメリカでも250年以上の歴史があります。近年は、ピラミッド、コロッセオ、万里の長城、ナイアガラの滝等の世界中の有名な建物や場所も緑色にライトアップされ、セント・パトリックス・デーを祝います。日本では1992年に初めて「セントパトリックスデーパレード東京」が行われ、年々その規模は拡大。北は北海道、南は九州まで全国でパレード、フェスティバル、マーケット、ライトアップ等でお祝いします。2019年、代々木公園での「アイラブアイルランド・フェスティバル」と表参道でのパレードは、18万3000人を動員し、盛り上がりました。
https://www.stpatricksfestival.ie/

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